頸椎捻挫や腰椎捻挫などで、後遺障害等級の認定を得るのは難しいといわれています。これは本当でしょうか?
なぜ、頸椎捻挫などは後遺障害として認められにくいのか?
交通事故で頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫と診断されるほとんどが自覚症状のみで、医師が診察をしても他覚所見を得る事が出来ません。つまり、症状の原因が客観的にはっきりとしません。
レントゲンやMRIに異常があったとしても加齢による症状とされる場合が殆どです。しかし、頚椎捻挫などでも後遺障害と判断される事があります。
よく言われる「医学的に立証できない症状は後遺障害として等級が認められない」「客観的で他覚的所見がないから後遺障害は認定されない」というのは「等級が認められない」「認定されない」と言い切るところが間違っています。確かに、「ムチウチでは後遺障害は難しい」といった多くの意見があるのは事実でそれは正しいです。しかし、このような自覚症状のみで他覚的所見のない頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫のために、第14等級9号という後遺障害の等級が存在するのです。
もちろん、むち打ちなどに客観的な他覚所見である画像所見や神経学的所見が得られれば12級10号に該当する事になります。
頸椎捻挫、腰椎捻挫の等級
ところで、一般的に頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫が後遺障害と認められるときは次の等級に該当します。
むちうち等の後遺障害認定基準
14級9号 (局部に神経症状を残すもの)
労働には通常差し支えないが、医学的に説明可能な神経系統の障害を残す所見があるもの。
12級10号 (局部に頑固な神経症状を残すもの)
労働には差し支えないが、医学的に証明できる神経症状をいう。
しかし、頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫由来の痛みや痺れ、頭痛などの症状が強く残っているのにも関わらず、後遺障害の等級が取れないという相談を多く頂きます。
等級が非該当になる理由は、「将来回復すると思われるから」もしくは「症状が強くない」といった2つが多く、このように判断されてしまう原因の8割は症状固定、つまり後遺障害診断書を作成するまでに、書類上で確認できる何らかの問題があります。
頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫で後遺障害が認められるとき
頚椎捻挫や腰椎捻挫で後遺障害が認定された時に自賠責から送られてくる認定理由(別紙)は、
「骨折等の明らかな外傷性変化は認めがたく、その他診断書等からも、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見に乏しい事から、他覚的に神経系統の障害が証明されたものとは捉えられません。しかしながら、治療状況、症状推移なども勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられる事から「局部に神経症状を残すもの」として別表第二表第14級9号に該当するものと判断します。」
というのが定型文章です。この認定理由(別紙)では治療状況と症状推移を理由として後遺障害の等級が認定されているところに注目してください。
つまり、これは被害者が>交通事故で受傷をして、初診を経て治療を行い、数か月治療・リハビリを行い、その間に適時適切な検査を経て後遺害診断書を作成する<というこの全ての流れが等級の認定理由であると説明しているのです。
よって、頚椎捻挫・むちうち・腰椎捻挫で正しい後遺障害としての評価を受けるには交通事故の発生日から出来るだけ早い時期に適時適切な対策をはじめる事で等級認定が望めます。
ここで注意をしたいのが、後遺障害診断書の作成の時(症状固定時)に、何も対策をしなかったからと言って「既に時遅し」と諦める必要はないという事です。後遺障害作成時に対応を行えば間に合う場合もかなり多く、仮に後遺障害診断書の作成を行ってしまったとしても、後遺障害の結果が出ていなければ、まだまだ対策は可能です。
それでも、すでに等級非該当の結果が出てしまっている場合は、後遺障害に対する異議申し立てという方法があります。ただし、症状固定までに等級認定に不利な事実が確認できてしまっていると、後遺障害と認められることはありません。
