「他覚的所見がないと後遺障害の等級が認定されない」
後遺障害の申請を行おうとすると,保険会社はこのように言う場合があります。
また、インターネットなどで少し交通事故の後遺障害について調べると、等級の認定には他覚所見が必要だという事に気づくはずです。そこで、被害者としては等級認定ために他覚所見を取るべく、「様々な検査をしなければならない」と考えるのですが、では、そもそも、他覚的所見とは何を指すのでしょうか?
他覚的所見は交通事故実務上の言葉で、医学の世界では他覚所見と言いますが、「他人からして確認できるもの」を言います。これには、被害者(患者)の感じるもの(自覚)によって、大きく分けて3つに分類する事が出来ます。
1、自覚を前提とした他覚的所見
2、自覚も含んだ他覚的所見
3、自覚を必要としない完全な他覚所見
後遺障害の等級認定に有効な他覚的所見は(3)です。しかし、医師の一般解では(2)までを他覚所見と考えているのが大半です。また、(1)も他覚所見としている医師もいますが、後遺障害(自賠責)では重要視されていません。つまり、医師に対して「他覚的所見は?」「診断書に他覚的所見を書いてください」と、単純に伝えるのは、神経症状の14級か12級か(頸椎捻挫や腰椎捻挫など)きわどい線にある場合、明確な基準ではない「他覚所見」という聞き方は、あいまいな回答につながるので、明確さが必要な12級にはいたらず、あいまいな14級となる可能性が高くなります。
なお、自賠責において「他覚的所見」と明示しているのは、腱反射、病的反射、筋力(MMT)、筋萎縮、知覚障害、その他ジャクソンテスト等です。
このような「交通事故の医学的考え方」と「医師の医学的考え方」の相違は、数多く存在します。例えば、医療照会を行う時などは、こういった事に注意をしながら質問文を考えなければ、期待する回答は得られなくなってしまいます。
対策としては、より具体的な文言で医師に伝える事が必要と考えます。それを、医師の性格や考え方、症状などを総合的に考えてケースバイケースで答えを出していくのが戦略と言えます。
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