MRI検査は体の中が撮影できる便利なものですが、撮影したMRI画像から異常などを判断するのは非常に難しく、「医師であればMRI画像が見られる」「整形外科ならMRIの読影が出来る」というのは実際のところ間違いです。
ある整形外科の先生からは「私はMRIがわかりません」という言葉を聞いたことがあります。実際、町の整形外科はMRI画像を見る事を得意としません。なぜなら、MRIの読影は開業医として必要な能力ではないからです。
そこで、交通事故の被害者としてMRI検査で心得ておきたいことを説明する前に、MRIとは?というところをザックリ説明します。
MRIの撮影
MRIの大分類の撮影方法として、T1画像とT2画像がありますが、これは磁力の強さによってコントラストをつけようとするものです。 初回のMRIの撮影方法は医師の判断に任せますが、MRIは奥が深く、ほかにもSTIR・脂肪抑制、T2WI・T2*、FLAIR、拡散強調画像など、細かく言えば、脂肪抑制の中でもSTIR以外にCHESSやSPAIRなどもありそれらの短所と長所・・・・と、その説明を加えれば1つのサイトが完成してしまうほどです。
そして、このMRIで所見を見つける場合には、これらを組み合わせて目的の病変を判断する事になります。見つけるという事は、後遺障害でいう他覚的所見の立証という事になります。
「こっちでは白く見えてこっちでは黒くみえる」
「急性期は周辺が黒ではなくグレーだけど時間が経つとくっきりした黒になっている」
「こっちの縦に切った画像には映っているけど、縦にスライスした画像は不鮮明だから正確な判断ができない」
MRIは白黒の世界からその病変を読み取るという、とても高度な技術と能力が必要です。白黒とは言っても、濃い白と普通の白、黒との中間のグレーもあり、MRI自体の進歩に伴い撮影方法が複雑化したことにより、もはや専門医以外では正確に読影できるものではなくなってきています。
また、後遺障害の立証という観点から、2回目3回目のMRI検査をオーダーする時には、撮影方法を指定する事も撮影目的によっては必要になります。
前回と同じ方法と同じスライス位置が望ましいのか、
前回と同じ部位を斜めにスライスするのが望ましいのか、
脂肪抑制方法を用いて撮影を行うのか、
矢状断と軸位断に加えて冠状断の撮影を加えるか、
MRミエロの撮影か、
造影剤を用いるか・・・
なお、MRIにはテスラといった単位がありますが、1.5テスラよりも3.0テスラの方が磁力が強いのできれいな画像が得られます。
MRI画像の見方
MRIの具体的な見方の説明は、例を挙げてブログで書いてみようと思っています。
MRIの見方を1つ紹介をすると、T2強調画像(T2WI)では血液は高信号・白く映りますが、低信号・黒く写るのは出血となります。こういった方法で脂肪、関節液、水などを判断していきます。*血液と出血が異なるのはその成分の違いから
そして、何か目的があってMRI撮影をする場合は、その目的に応じて撮影方法を選択します。例えば、神経原性浮腫を見つけようと考えると、T1脂肪抑制T2をそれぞれ撮影して、高信号/等信号の確認をするという事になります。これは立証の責任がある被害者にとって画像を見る前から、撮影方法も考える準備が必要とも言い換える事が出来ます。
たとえMRIの撮影方法はマニュアルに従ってクリアしたとしても、残念なことにMRIが読影できる医師は少なく、その為かMRIの撮影自体を否定する町の整形外科もあります。撮影が出来たとしても、MRI画像がきちんと見られないまま、撮影したMRI画像だけが存在するという状態で症状固定・後遺障害診断書の発行に至ってしまう事もあります。
整形外科とMRI
町の整形外科にMRIがある事は滅多にありません。通常はMRI撮影をするときは、その医師に紹介状を作成して頂いてから、MRIのある病院にMRI撮影だけを行いにいきます。撮影に至るまで困難な場合も多いのですが、それよりも問題なのはその後です。
「MRI画像の読影を誰が行うのか」
紹介先ででMRI撮影を行った後の流れとして、
1、MRIの撮影だけを行って、画像もそのまま整形外科(紹介元)に送られて終わりというパターン
2、MRIの画像所見を撮影先の専門医が整形外科にレポートするパターン
の2つに別れますが、1では後遺障害をきちんと立証したいと願う場合は、念のため画像を借りて読影する必要があります。
2の場合でも、その3割程度は極めて簡略化されたレポート所見または間違っているレポートだったりするので、これもレポートを確認をして疑問に思ったときには画像を借りて読影する必要があります。
なお、読影とは、画像を見て読み取る事です。MRI画像を見て「ここがちょっと白いね」という程度では、読影とは言いません。
医という世界の全体的にいえる事ですが、生命に危険が及ばないレベルのものは意外と適当です。ある外科医からは「整形外科はあんなの下の下。最低だ。」という発言を聞いたことがあります。理由は生命の危機に直面する機会がないからだそうです。
しかし、手の専門整形外科医は手のMRIの読影力は抜群であり、整形外科でも四肢切断レベルの開放骨折をその技術力で温存してしまう医師も実在します。
運まかせと言えるこの状況は被害者がどうにかしなければならないのが実情です。
MRIが専門
一応MRIの専門は放射線科の医師という事になっていますが”必ず”とは限りません。
MRI画像専門医が言うには「一般的に1人の患者からMRI画像で診断をするとなると20分は必要。隅から隅までとなれば1時間は必要。」だそうです。読影の数をこなすと徐々に時間は短縮されるが、採算の問題からそこまでに至るのが難しく、近年ではMRI自体の発展も早く勉強が追い付かないのが理由で、MRIが真底読影できる医師は少ないそうです。
ただ、医師でなくともMRIの読影は自由です。MRI画像がポイントとなる後遺障害では、読影にたっぷり時間が使える医療関係者、弁護士や行政書士に画像を見てもらう事も必要です。なぜなら、自賠責が等級の判断の際に画像の判断にだけでどれ程の労力を消費しているかを考えれば、それに対応する必要がある被害者も、それ相応の労力が必要だからです。
同じカテゴリーの記事

関連キーワード: 自賠責