後遺障害認定の基準の基準~4つの大前提ポイント~

後遺障害の基本

後遺障害認定基準として、その症状が後遺障害の何級に当たるのか?という大まかな基準は、交通事故で残存した症状ごとに後遺障害等級表で細かく決められています。

その後遺障害等級表に当てはまる前の段階の基準として、つまり、「後遺障害等級表で何等級か?」の大前提として以下の4つが必要です。例え「残った症状は首が回らない事」と後遺障害診断書だけで主張し、残った症状が後遺障害等級表の基準に合致するとしても、そこに至るまでの経緯で以下の4つが伴わなければ後遺障害の認定は非該当となります。

後遺障害認定の4つのポイント

後遺障害の4つの大前提ポイント

1、回復が難しいと思われる障害
2、後遺症が医学的に証明されている事
3、交通事故と相当因果関係があること
4、労働能力の喪失を伴うもの

後遺障害の4つのポイント

具体例を上げると、受傷後6か月で後遺障害の申請に必要な後遺障害診断書を作成した時に、その中身で肩の動きが正常の半分以下になっていると書かれたとします。診断書の内容を認定基準で考えれば10級に該当する内容です。これは、何級に当たるのか?という基準で、後遺障害等級表で判断できます。

しかし、実際に等級が認められるためには、後遺障害診断書に書かれている肩の動きが半分以下という症状が、4つの大前提基準をクリアしているという事が説明できている必要があります。認定基準のクリア無くして、肩の動きが半分以下という症状が後遺障害と認められることはありません。

そして、この認定基準をクリアしていることを説明する責任は、被害者にあるという事が”交通事故と後遺症で説明している被害者としての責任です。

「何年もこんな症状が続いているのに!」と言うだけでは、後遺障害は認められません。なぜなら、等級認定の基準の基準である大前提をクリアしている必要があるからです。

1、回復が難しいと思われる障害
2、後遺症が医学的に証明されている事
3、交通事故と因果関係があること
4、労働能力の喪失を伴うもの

簡単な言葉ですが、非常に奥の深いもので、これを以下で説明します。

(1)症状の回復が難しいと思われる障害が後遺障害と認定される

交通事故から6カ月が経過した時に、その症状が残っているだけで後遺障害が認定されるほど、後遺障害の認定基準は甘くはありません。将来においても回復困難な事を説明しなくてはならず、後遺障害診断書に「回復は難しい」と書かれているだけでは、後遺障害の等級は取れません。この「回復が難しいと思われる障害」は、後遺障害全体の80%が症状固定日までの通院加療。症状の推移などで判断されてます。そして、後遺障害が認定されることになります。

回復が難しいと思われるためには「十分な治療を行ったが、治療の効果がないか、ほとんどないという状況」ということを後遺障害の申請をするときに説明できる資料を提出することが必要です。もちろん、それが客観的にとらえられることができるものでなければならず、この点については後遺障害の申請の前、交通事故直後から気を付けなければならないことです。

以上の事を一言でいうと、「自賠責から見て、受傷内容に応じた十分な治療を行ったか」という事になります。

(2)後遺障害が医学的に証明されている事が求められる

レントゲンやMRI・CTでの画像で異常所見があれば証明できます。もちろん、画像所見と症状の因果関係も重要です。この画像所見がない場合では”証明”が出来ません。では、等級は取れずに非該当になるのかといえばそうでもなく、医学的に推定する事が出来れば、後遺障害の等級は認定されます。レントゲンやMRI・CTで異常が確認できない事は多いと思います。そういった場合には、医学的推定が出来るように、通院状況や治療内容等を総合的に勘案して(筋電図や神経学的テストも有効)等級が認定されるように対処しなければなりません。

症状によって、交通事故から症状固定までにどの程度の、そして何回の検査が、いつ頃必要なのか?

行う事はわかっても、行ってはいけない事は何なのか?

そもそも医学的推定と認定される為に行うと不利になってしまうものとは何か?

正しい等級を得るには、受傷転機などで個別に考える必要があるので、後遺障害の認定を得るにはこれが一番難しいポイントといえます。

普通に通院をしていれば良いのでは?というのも早合点で、医師は治療を行うのが専門であって、症状を自賠責が認めるように医学的に証明するなどといった治療とはあまり関係が無い事は考えません。

参考URL:交通事故と医師、医師は知らない

(3)交通事故と相当因果関係がある症状でなければ等級は認定されない

4つのポイントの中で一番難解なのがこの、「事故との相当因果関係」の説明です。残った症状について医師が「交通事故によるもの」と説明しているだけで、すべてが交通事故と因果関係がある症状として認定されることはありません。また、画像で異常が見つかったとしてもそれが事故によるものとされるには条件があります。

基本的には、
交通事故以前からあった症状か、
交通事故直後に発生していた症状か、
交通事故の発生状況から妥当か、
交通事故の後に交通事故とは関係ない理由で発症したか、
自賠責の調査事務所は色々な角度から相当因果性を見てきます。例えば、交通事故から3カ月経過後に初めて確認された症状は基本的に認定の対象外となります。(それが医学的に正しい発症であれば因果関係は認定されます)

(4)後遺障害によって労働能力の喪失を伴うものが等級の対象となる

簡単に説明すれば、「軽いくない症状」「仕事に支障が出る程度」である事です。後遺障害診断書の自覚症状は重要ですが、この自訴だけでは説明できず、もっとも難しい説明ポイントです。

仕事に支障が出る程度、という認定基準に達しているかどうかは、後遺障害診断書だけで判断されるものではなく、事故証明、事故発生状況報告書、経過診断書、診療報酬明細書、時には物損状況などを細かく確認し、総合的に判断されます。

つまり、受傷直後から後遺障害の等級認定に向けての闘い(準備)は始まっているのです。

事故証明は事故発生の基本情報が記載されています。

事故発生状況報告書にはどのような交通事故で受傷したかがわかります。車対歩行者で10M飛ばされたというのであればその衝撃が判断できます。

経過診断書・診療報酬明細書は、多い場合では一ヵ月に一度発行されます。治療費を負担している保険会社に病院から直接送られるもので、一般的には被害者が目にすることはありません。しかし、極端な話、受傷後1ヶ月で初めて発行された経過診断書の出来が悪いと、どんなに出来の良い後遺障害診断書を作成しても後遺障害の認定はとれません。

被害者請求では後遺障害診断書はもちろんの事、経過診断書・診療報酬明細書や事故発生状況報告書は、被害者が提出するので必ず目を通すことができます。できれば、治療途中から内容を確認し、然るべき内容の診断書となるよう戦略を練るべきです。

後遺障害を考える

後遺障害の等級の認定に大切なポイントのまとめ

交通事故直後に後遺障害が残る事が予想できる場合はもちろんの事、後遺障害の可能性が不明な場合でも、最悪な場合を想定して、上の4つの大前提ポイントが説明できるように通院リハビリをし、診察を要求し、診断を受けるべきです。

この4つのポイントはすべての後遺障害の認定に共通することで、これがクリアできていて具体的な等級の審査が行われることになります。

後遺障害の認定実務上では

そもそも、交通事故の後遺障害の認定を得るには「傷病が治った時に残存する当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復困難と見込まれる精神的または身体的なき損状態であって、その存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの」である事が必要とされています。

実務では、これらを事故の態様、受傷の転機、愁訴の一貫性、症状の経過、他党的所見、症状固定時期の妥当性といったような項目に分け、全ての項目で「残った症状がぞれぞれに該当するか?」を検討し等級を判断します。もちろん、これらは被害者が積極的に立証しなければなりません。

後遺障害の認定は、被害者の公平性の観点から、これらが確認できる症状に等級を認定する決まりがあります。つまり、これらが欠けていれば、いくら症状が強く残存していたとしても、等級は認定しないというのが自賠責のいう公平であり、後遺障害実務となっています。

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  1. 江藤真由美 より:

    8/11にタクシーと自転車(私)で交通事故があり当て逃げで相手は特定できないままです。警察にはとどけてすぐ近くの接骨院で施術所を書いてもらいました。その時は両膝の打撲と腕の擦り傷だけですぐに痛くなくなったので治療に通わなくなったのですがそれから少しして首が苦しくてそれに伴い両腕が苦しくていつも自分で揉んであざになるくらいでした。そのうちめまい吐き気が出てきてトラベルミンや胃薬が内科で処方されました。それでもとにかく首が苦しくて整形外科にいってレントゲンを取りましたが加齢によるものだろうといわれ、その時はパソコンを長時間使用していたための疲れと思って医師には話しましたのでストレッチをするようにと言われシップと痛み止めをもらいました。でもストレッチすると痛くて涙がでるほどでストレッチもやめてしまいました。首のマッサージのものを買ったりしましたが苦しくてなおりません。昨日交通事故当日にいった接骨院に行き説明してみてもらいましたが首からくる手のしびれは首の治療をしても一日1みりしか進めないから時間がかかるといわれひとまず通院することにしました。保険は入っているのですが加入が9月なので適応外でした。

  2. マツオ より:

    はじめて相談させていただきます。H22.2業務中に転落して両手首を及び顔面から地面に突っ込み、頬骨骨折、両手首負傷、全身打撲で4日ほど入院、2週間ほど自宅療養しました。
    その後両手首の痛みがなかなかとれずレントゲン異常なし、やっとこさMRIとってもらって右手しゅうじょう骨の骨折とわかりました。
    それから月1回程度通院(投薬、湿布のみです。リハビリは医者から打診が無かったのでしておりません。)
    先日半年ぶり?にMRI受けてしゅうじょう骨の骨折も問題無しと言われましたが、なにせ手首が痛く、投薬、湿布で通院を月1回続けてきました。
    しかし、先日医者より治療を終了して後遺症診断の検査をしましょうか?と言われ手首の可動域やら
    握力やら検査を受けました。手首をついて椅子から立ち上がることはできず、ペンも強く書けず、パソコンも数分おきに休憩しないとできません。
    入浴時の洗面器も右手だけでは痛くてお湯をすくえません。握力は左15kg、右6kgでした。ただ、レントゲン、MRIの結果には問題無いようです。
    今、診断書を申し込み中で近日中には診断書ができたと病院から連絡あると思います。医学的にレントゲン、MRIで異常がない為に後遺症認定が認め
    られるものか心配です。医者の診断書の書き方が重要みたいなので、どうすればよいでしょうか?このまま待つべきでしょうか?
    こんな痛みの状態で治療打ち切りはつらいです。仮に認定されても14等級くらいで50万くらいですが、一生この痛みと付き合うと思うとつらいです。
    ぜひアドバイスいただけますよう、宜しくお願いします。

    • 戦略法務 より:

      本当に舟状骨骨折だけなのか、再検査をする必要があると考えられます。レントゲン、MRIだけでは発見できないものもあります。現状では14級の可能性が高いです。

  3. 小林 より:

    先日 玉突き事故で車に追突され救急車で病院に運ばれ頚椎捻挫と診断されました。
    現状、頭がフラフラして気持ち悪いです。
    慰謝料はしっかりと正当な額をもらいたいのですが会社員をしている為近くの病院に変えたいとおもっています。
    今まで事故にあったことが無いのでどういった病院を選べばいいか分かりませんので教えて頂けたらと思っています。宜しくお願いしす。

    • 戦略法務 より:

      リハビリ通院であれば、小さな病院で大丈夫です。頸椎捻挫であれば、町の整形外科といったところです。

  4. ヤマグチ より:

    H22.6に自転車に乗り直進中にハンドル操作を誤った乗用車に、幅寄せするような形で接触され、首がむちうち症になり、頭痛や痛みに悩まされている状態で、後遺障害を被害者申請しましたが、認められませんでした。

    本文中に、
    『受傷後1ヶ月で初めて発行された経過診断書の出来が悪いと、どんなに出来の良い後遺障害診断書を作成しても後遺障害の認定はとれません。』とあります。
    先日、弁護士事務所で働く知人に通院していた病院が保険会社に提出していた診断書のコピーをみせたところ、
    「所見も書いてないし、ハンコを押してあるだけのとても酷い診断書だ」と、言われました。
    後遺障害申請時は、今ほど症状も辛くなく、後遺障害申請書類の医師の診断書には「明らかな神経学的異常を認めず」とも記載されてしまいました。
    でも、実際に痛み等、辛い状況にあります。
    このような状況で、他の医師に診断をしてもらって異議申立てをしても、後遺障害認定は難しいのでしょうか?

    • 行政書士 笠原 仁 より:

      『受傷後1ヶ月で初めて発行された経過診断書の出来が悪いと、どんなに出来の良い後遺障害診断書を作成しても後遺障害の認定はとれません。』とは、記載されていないと思われます。別紙の文章をそのままお知らせください。

      • ヤマグチ より:

        転写範囲が短すぎたようで、申し訳ありません。

        経過診断書・診療報酬明細書は、多い場合では一ヵ月に一度発行されます。極端な話、受傷後1ヶ月で初めて発行された経過診断書の出来が悪いと、どんなに出来の良い後遺障害診断書を作成しても後遺障害の認定はとれません。

        • 行政書士 笠原 仁 より:

          “本文”とは、HPの記事のことですね。非該当理由の本文かと思ってしまいました。。
          さて、ご質問の他の医師への診察の件ですが、おそらく、それ事態は意味がない(等級が取れない)者と思われます。詳細が分かりませんので、言い切ることはできませんが、今まで診ていただいた医師に対してアプローチをするのがベストです。

  5. H より:

    義歯については3本以上が後遺障害の対象となります。
    高次脳機能障害は意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力がその程度喪失したかによって等級が判断されます。
    手続きに詳しい方であれば、後遺障害診断書以外に高次脳機能障害に対する書類添付を行っているはずですので、その内容が重要です。

  6. 石上 より:

    H20.7.5自転車にて通勤途上、後方から来た車に跳ねられる事故に。(過失割合 当方0)脳挫傷で1週間意識不明、4ヶ月入院し復職しました。
    H21.4高次脳機能障害3-3に。
    H22.11.26症状固定、後遺障害診断書を取りうけ。(手続きは損保ジャパン・知人にやってもらってます)
    質問です 事故で前歯2本(差し歯)が破損し、歯科医院で治療中ですが、歯根が破損し義歯になりました。インプラント治療を受けたいのですが、後遺障害となりますか?
    それと高次脳機能障害、複視の症状が残っておりますが、後遺障害等級は何級くらいでしょうか?